2026年度(令和8年度)の診療報酬改定は、多くの病院にとって「生き残りをかけた最終試験」のような様相を呈しています。すでにほとんどの病院では、経営破綻寸前であり、 「備品を安くすれば黒字になる」という段階は、現場ではもうとっくに通り越しています。 今回は、現役技師かつFPの視点から、「節約の限界」の先にある黒字化戦略を徹底解説します。

1. 「節約」はもう限界。それでも赤字が続く本当の理由
現在、私が勤務している病院を含め、多くの赤字病院では、すでに以下のようなコストカットをやり尽くしています。
- 安い消毒液、低コストな手袋・マスクへの切り替え
- 可能な限りの残業代の抑制や、消耗品の徹底した節約
- 医療機器の更新先延ばし(保守点検を切るなど)
しかし、「支出を減らす」努力だけでは、高騰する光熱費や人件費(賃上げ対応)をカバーしきれないのが現実です。FP的な視点で見れば、損益分岐点を下げる努力は限界にきていると感じています。この診療報酬改定を機に、「単価(診療報酬)」を戦略的に上げにいく、「医療スタッフ一丸となっての経営」への転換が不可欠です。
2. 「診療報酬改定」で放射線部にできることは何か
今回の診療報酬改定で、我々に直面するのは撮影・技術料の区分見直しです。つまり、いくつものX線機器が「稼ぎ頭」になり得るということです。
例えばCT撮影料の区分見直しを例にしますと、今回の改定でのCT撮影現場での大きな目玉は、CT装置の性能による評価の明確な「格差」です。
128列以上のマルチスライスCTへの高評価
これまでのCT撮影料(64列以上1,000点など)の枠組みが整理され、128列以上の最新鋭機を用いた高度な撮影法に対し、評価が新設・増点(例:1,100点〜など)されました。
これにより1件CT撮影しますと、約1000点(10000円)もらえていたものが、約1100点(11000円)になるということです。これは非常に大きいです。
- 狙い: 被ばく低減技術や超高速撮影といった「医療の質」を高める改革を適切に評価すること。
- 現場への影響: 「古い装置をだましだまし使う」よりも、「最新鋭機に投資して高い点数を確実に摂る」ほうが、結果として黒字化への近道になるというメッセージです。

3. どの科・どの部門が黒字化の鍵を握るのか?
病院経営をマクロで見ると、黒字化の鍵は「高単価かつ高回転な部門」にあると考えます。
- 外科系・救急科: 手術加算や救急搬送の受け入れによる加算が収益の柱。できる限り、患者を受け入れる。
- 放射線部(ここが最重要): 手術や診断に欠かせない「画像」を供給する心臓部です。より迅速で、適切な撮影が求められてきます。
特に放射線技師は、「1枚撮って終わり」ではなく「加算を最大化するマネージャー」としての役割が求められます。
4. 放射線技師が黒字化に貢献できる「具体的な数字」
社会人6年目の私たちが意識すべきは、以下のインパクトです。
- 画像診断管理加算の「維持と格上げ」: 施設基準を維持できているかで、1件あたり700円〜3,000円の差が出ます。
- 128列以上のCTによる単価アップ: 1件100点のアップは、年間1万件撮る病院なら年間100万円の純増です。
- 働き方の変革(賃上げへの対応): 「ベースアップ評価料」を確実に算定するためには、技師の適切な配置や実績報告が必要です。事務方任せにせず、現場から「この加算は取れるはず」と声を上げることが、自分たちの給料を守ることに直結します。
5. これからの働き方:「ただの医療従事者」から「経営参画者」へ
「安いマスクを使わされる」ことに不満を言う時期は終わりました。これからの技師に求められるのは、「病院に利益をもたらし、その原資で質の良い備品と給料を勝ち取る」というマインドセットです。
- 算定要件を熟知する: 自分が回しているCT1件が、何点(何円)なのかを把握する。
- 効率を最大化する: 128列以上のCTの撮影スピードを活かし、安全かつ迅速に件数をこなす。
- 資格を武器にする: 治療専従や医学物理士、1種放射線取扱主任者などの資格は、施設基準の維持(=大きな加算の維持)に不可欠な「盾」であることを自覚する。
まとめ:黒字化の鍵は「放射線部の攻めの姿勢」にある
病院全体の黒字化は、現場の小さな節約の積み重ねではなく、「稼げる部門が正しく、効率的に稼ぐこと」で達成されます。
最新鋭のCTを駆使し、複雑な加算要件をクリアし続けること。それが、物価高騰に負けず、私たちの賃上げを勝ち取る唯一のルートです。


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